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札幌地方裁判所 昭和59年(行ウ)29号 判決 1988年12月08日

第一事件原告 広西小一郎

第二事件原告 辻博

第三事件原告 安富正

第四事件原告 柴田清造

第五事件原告 菅原三治郎

第六事件原告 金川幸三

第一事件・第六事件被告 札幌南税務署長

第二事件・第三事件・第四事件・第五事件被告 札幌西税務署長

代理人 堀嗣亜貴 喜多剛久 榎本恒雄 坂井満 伊東宣博 ほか三名

主文

一  第四事件原告の訴え中、被告札幌西税務署長が同原告に対して昭和五七年九月一八日付でした同原告の昭和五六年分の所得税の更正の請求に対する更正処分のうち譲渡所得金額について更正の理由なしとする部分及び第五事件原告の訴え中、被告札幌西税務署長が同原告に対して昭和五七年九月六日付でした同原告の昭和五六年分の所得税の更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知処分の各取消を求める部分をいずれも却下する。

二  第一事件ないし第六事件各原告のその余の各請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、第一事件ないし第六事件各原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

(第一事件について)

一  請求の趣旨

1 第一事件被告(第六事件被告、以下「被告札幌南税務署長」という。)が第一事件原告に対して昭和五七年九月一四日付でなした第一事件原告の昭和五六年分の所得税についての更正処分のうち、総所得金額二一二四万二八三六円を超える部分及び同過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取消す。

2 訴訟費用は被告札幌南税務署長の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1 第一事件原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は第一事件原告の負担とする。

(第二事件について)

一  請求の趣旨

1 第二事件被告(第三、第四、第五事件被告、以下、「被告札幌西税務署長」という。)が第二事件原告に対して昭和五七年九月六日付でなした第二事件原告の昭和五六年分の所得税についての更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取消す。

2 訴訟費用は被告札幌西税務署長の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1 第二事件原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は第二事件原告の負担とする。

(第三事件について)

一  請求の趣旨

1 被告札幌西税務署長が第三事件原告に対して昭和五七年九月八日付でなした第三事件原告の昭和五六年分の所得税についての更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取消す。

2 訴訟費用は被告札幌西税務署長の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

(本案前の答弁)

1  第三事件原告の訴えを却下する。

2  訴訟費用は第三事件原告の負担とする。

(本案の答弁)

1  第三事件原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は第三事件原告の負担とする。

(第四事件について)

一  請求の趣旨

1 被告札幌西税務署長が第四事件原告に対して昭和五七年九月一八日付でなした第四事件原告の昭和五六年分の所得税についての

(一) 更正の請求に対する更正処分のうち、譲渡所得金額について更正の理由なしとする部分

(二) 再更正処分のうち、総所得金額五四九万一二〇〇円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、右いずれも昭和五九年五月二八日付の裁決によつて一部取消された後のもの)をいずれも取消す。

2 訴訟費用は被告札幌西税務署長の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

(本案前の答弁)

請求の趣旨1の(二)の訴え中の再更正処分(ただし、昭和五九年五月二八日付裁決で一部取消された後のもの)のうち、総所得金額五四九万一二〇〇円を超え一一二四万一二〇〇円までの取消を求める部分はこれを却下する。

(本案の答弁)

1  第四事件原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は第四事件原告の負担とする。

(第五事件について)

一  請求の趣旨

1 被告札幌西税務署長が第五事件原告に対して、第五事件原告の昭和五六年分の所得税について、

(一) 昭和五七年九月六日付でなした更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分

(二) 昭和五七年一一月一八日付でなした更正処分のうち、総所得金額一六六万四六〇〇円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、右いずれも昭和五九年五月二八日付の裁決で一部取消された後のもの)

をいずれも取消す。

2 訴訟費用は被告札幌西税務署長の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

(本案前の答弁)

請求の趣旨1の(二)の訴え中、更正処分(ただし、昭和五九年五月二八日付裁決で一部取消された後のもの)のうち、総所得金額一六六万四六〇〇円を超える部分の取消を求める部分はこれを却下する。

(本案の答弁)

1  第五事件原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は第五事件原告の負担とする。

(第六事件について)

一  請求の趣旨

1 被告札幌南税務署長が第六事件原告に対して昭和五七年九月一四日付でなした第六事件原告の昭和五六年分の所得税についての更正処分のうち、総所得金額三三四八万二六五六円を超える部分及び同過少申告加算税賦課決定処分(ただし、右いずれも昭和五九年五月二八日付の裁決によつて一部取消された後のもの)をいずれも取消す。

2 訴訟費用は第六事件被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1 第六事件原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は第六事件原告の負担とする。

第二当事者の主張

(第一事件について)

一  請求原因

1 第一事件原告は、被告札幌南税務署長に対し、昭和五七年三月一一日第一事件原告の昭和五六年分の所得税について第一事件原告の総所得金額を二一二四万二八三六円(内訳は別表一の1欄記載のとおり)、納付すべき税額を三九九万三〇〇〇円とする確定申告をした。

2 被告札幌南税務署長は、第一事件原告の右申告に対し、同年九月一四日付で、第一事件原告の昭和五六年度の総所得金額を三〇三九万二八八六円(内訳は別表一の2欄記載のとおり。)、納付すべき税額を九〇一万五一〇〇円とする旨の更正処分(以下「第一事件更正処分」という。)及び過少申告加算税賦課決定処分(以下「第一事件賦課決定処分」といい、右第一事件更正処分と併せて「第一事件各処分」という。)を行つた。

3 第一事件原告が第一事件各処分について、同年一〇月二九日被告札幌南税務署長に対し、異議申立てをしたところ、同署長は、昭和五八年一月七日付で異議申立てを棄却する旨の決定をした。

4 次いで、第一事件原告は、同年一月二一日国税不服審判所長に対し、審査請求をしたが、同所長は、昭和五九年五月二八日付で審査請求を棄却する旨の裁決をした。

5 しかしながら、第一事件各処分には、第一事件原告の総所得金額を過大に認定した違法があるから、第一事件原告は、被告札幌南税務署長に対し、第一事件各処分の取消を求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1ないし4の各事実は認める。

2 同5の主張は争う。

三  被告札幌南税務署長の主張

1 総所得金額とその内訳

第一事件原告の昭和五六年度の各種所得の金額及び総所得金額は、所得税法に基づいて計算すると、別表一の2欄記載のとおりである。

2 譲渡所得金額の内訳及び算出根拠

(一) 第一事件原告は、株式会社真駒内ゴルフ場(以下「(株)真駒内」という。)の株式(以下「本件株式」という。)一株を昭和五一年ころに取得したが、右株式を昭和五六年一月二八日訴外高雄ビル開発株式会社に代金一一一〇万円で売却した。

(二) 右売却代金一一一〇万円から所得費用一四〇万円、譲渡費用四万九九五〇円及び譲渡所得の特別控除額五〇万円を差引いた残額の九一五万〇〇五〇円が第一事件原告の昭和五六年分の譲渡所得金額である。

3 前記譲渡所得は、所得税法(昭和六二年法律第九六号による改正前のもの。以下「法」という。)九条一項一一号ニ、同法施行令(以下「令」という。)二八条の二により、非課税所得には該当しないので、被告札幌南税務署長が前記譲渡所得に課税したことは適法であつて、第一事件各処分に違法はない。

(一) (株)真駒内は、ゴルフ場の経営を主たる目的として、昭和四二年一二月七日に設立された会社であり、札幌市南区常盤二〇〇番地にゴルフ場(以下「本件ゴルフ場」という。)を所有し、経営している。

(二) (株)真駒内は、本件ゴルフ場の利用につき、会員制をとり、会の名称を「真駒内カントリークラブ」(以下「本件ゴルフクラブ」という。)と称し、会員資格の取得について名誉会員、特別会員、法人会員、個人会員、株主会員、家族会員、平日会員の七つの方法を定め、法人会員、個人会員、家族会員及び平日会員は、(株)真駒内の所定の申込み手続きを行い、その承認を受け、所定の入会金及び保証金を納付することによつてその資格を取得するものとされ(いわゆる預託金会員)、施設利用にあたつては、プレー料金のほか年会費及びロツカー使用料を負担することになつていた。

(三) 株主会員は、(株)真駒内の株主が所定の手続きを経て入会することになつており、入会にあたつて入会金及び保証金を納付する必要がなく、本件ゴルフ場施設の利用にあたつても年会費及びロツカー使用料を支払う必要がないなどの点で、一般利用者はもちろん預託金会員に比しても有利な条件で、また、プレー料金についても一般利用者に比して低廉な料金で本件ゴルフ場施設を利用できるなどの継続的権利を取得できる地位を有していたものである。

(株)真駒内は、昭和四四年六月一五日から本件ゴルフ場の施設の利用を開始したが、第二期営業年度(昭和四三年一二月一日から昭和四四年一一月三〇日まで)に入つて、株主全員に対し、「真駒内カントリークラブ会員証(株主)」なる株主会員証を発行し、該当株主の株主台帳の割印欄に割印の上、これを各株主に交付することによつて、全株主を株主会員として処遇し、各株主もこれに何ら異議を述べずに右会員証を受領して株主会員となつたものである。

4 法九条一項一一号ニの立法経緯及び立法趣旨等による考察

(一) 法は、原則全額課税の理念を採用しているが、例外的措置として、昭和二八年の法改正により有価証券の譲渡による所得については原則として非課税とした(法九条一項一一号参照)。このような例外的措置をとつた趣旨は、わが国の資本の蓄積のための資本市場の育成という政策的配慮及び所得捕捉の困難から生ずる課税上の不公平の回避という課税技術上の配慮の二点であつた。

(二) ところで、右例外的非課税措置のさらに例外として昭和四八年法律第八号によつて追加された法九条一項一一号ニの規定及び令二八条の二によつて、「ゴルフ場の所有又は経営にかかる法人の株式又は出資を所有することがそのゴルフ場を一般の利用者に比して有利な条件で継続的に利用する権利を有する者となるための要件とされている場合における当該株式又は出資の譲渡による所得」が課税されることとなつたが、その趣旨は、以下のとおりである。

すなわち、一般に、ゴルフ会員権には、その成立形態からみて、<1>株主会員権、<2>預託金会員権、<3>ゴルフ場経営企業の株式一株以上を保有し、かつ預託金等の一定額の金員を預託することを要件とする株式、預託金複合形態の会員権(以下「複合形態の会員権」という。)の三種類に分類できるが、昭和四八年の法改正前には、ゴルフ会員権としての経済的実態には差異がないにもかかわらず、右ゴルフ会員権のうち、<2>の預託金会員権の譲渡益には課税され<1>の株主会員権及び<3>の複合形態の会員権の各譲渡益には課税されないという不均衡が生じていたため、その是正を図ること、更に、ゴルフ場経営企業の株式が当該ゴルフ場の土地の分割所有権の経済的実態を有すると考えられることから、地価高騰の抑制のために当時導入された土地譲渡益に対する重課制度との均衡を図ること、及び昭和四八年当時はもはや資本の蓄積や資本市場の育成が重要な時代ではなくなつており、また株式等の形態によるゴルフ会員権はその捕捉が容易であるため有価証券譲渡益を非課税とする主たる理由が本件のような株式には該当しなくなつていたことである。

(三) したがつて、当該株式が課税されるか否かは、専らその株式がゴルフ会員権としての経済的実態を有するか否かにかかり、当該ゴルフ場が、その経営形態として、株主会員以外の会員権を認めぬ形態を採用しているか、株主会員権と預託金会員権の双方を認める形態を採用しているかは無関係である。

(四) 課税対象となるのは、株主会員権が認められているゴルフ場経営企業の株式等の譲渡益であり、所定の手続が未了である等の理由で現実には当該ゴルフ場の継続的利用権が付与されるに至つていない場合でも継続的利用権が現実化したときの価値を帯有しておりその譲渡価格も継続的利用権が現実化した場合を念頭に置いて定められるのであるから、継続的利用権の現実的付与の有無を問わず課税されるものである。

(五) また、課税されるのは、本件株式の譲渡益全額であつて、預託金会員権価格相当額ではない。このことは文理上も、また譲渡対価を本来の株式相当部分と預託金会員権相当部分に分けることが不可能であることからも、また前記(二)記載の立法趣旨から考えて預託金会員権価格相当額部分のみならず株式相当部分を非課税とする実質的理由がなくなつていることからも明らかである。

四  被告札幌南税務署長の主張に対する認否

1 被告札幌南税務署長の主張1の事実は認める。ただし、譲渡所得については非課税である。

2 同2の事実は認める。

3 同3の冒頭の主張は争う。

4 同3(一)、(二)の各事実は認める。

5 同3(三)の事実中、株主会員は(株)真駒内の株主が所定の手続きを経て入会することになつていたことは認め、株主会員が本件ゴルフ場施設を有利に利用できる継続的権利を取得できる地位を有していたことは否認し、その余は不知。

6 同4(一)の事実は不知。

7 同(二)のうち、法九条第一項一一号ニ及び同法施行令二八条の二の法意が、株式形態のゴルフ会員権と預託金会員権との課税上の均衡を図る趣旨であることは認め、その余の事実は不知。

8 同(三)ないし(五)の主張は争う。

五  第一事件原告の主張

1 法的権利性及び継続性の欠如

(一) 本件ゴルフクラブの規約に株主会員が設けられた理由は、(株)真駒内が無配状態であつたにもかかわらず、各株主が本件ゴルフクラブの会員募集に尽力したため、その功労に対する恩恵としての意味及び本件ゴルフクラブの役員に株主を就任させるためには、株主が本件ゴルフクラブの会員であることが必要であつたことの二点であつて、施設利用とは、全く関係がなかつた。

(二) 株主会員については、(株)真駒内の定款や約款に規定はなく、また、株主と会社との間に個別契約の締結もないので法的な権利性がない。

(三) 株主会員は、本件ゴルフクラブの理事会の決議で何時でも取消、変更がなされ得る不安定なものであり、従来株主会員を預託金会員に切り替えるという案が出たことがあつたり、(株)真駒内の経営陣は時期をみて本件ゴルフクラブの規約から株主会員規定を削除する予定であるなど継続性がない。

(四) (株)真駒内の株主であつた者六〇名中、五七名が昭和五六年一月二七日の取締役会の承認を経て、その株式を訴外高雄ビル開発株式会社に譲渡したが、新たに株主となつた右訴外会社は、本件ゴルフクラブの株主会員となつていないし、今後も株主会員となる意思もない。

(五) 以上の次第で、本件ゴルフクラブの株主会員なるものは、株主に対する功労的あるいは恩恵的措置にすぎず、法的な権利あるいは財産権であるということはできない。

2 併用制形態について

(一) 令二八条の二で譲渡益に課税される株式とは、当該ゴルフクラブの会員になるためには、その会社の株式所有者となる他に方法がない場合に限られ、株主会員制と預託金会員制との併用ないし混合形態のゴルフクラブについては、課税対象外である。

なぜならば、そのように解してこそ、課税要件が一義的で明確に定められ、課税要件明確主義の理念が貫かれるし、特に令二八条の二は、有価証券の譲渡所得非課税の原則に対する例外規定であるので、法がその性質に鑑み、紛らわしい解釈を避けて明確を期したものであるからである。

(二) 本件ゴルフクラブにおいては、預託金会員が多数おり、併用制をとつている。

(三) したがつて、本件株式の譲渡による所得は、法九条一項一一号ニ及び令二八条の二には該当しない。

3 特別事情による令二八条の二の適用除外

令二八条の二の趣旨が預託金会員権との均衡及び株主会員制を採用することによる課税回避の防止にあるとすれば、その適用は右の趣旨を実現する範囲にとどめるのが相当であり、本件ゴルフクラブについては、以下のような特別の事情を考慮すると、令二八条の二を適用すべきでない。

(一) 本件ゴルフクラブの会員権の相場は、本件株式の売却当時、約一〇〇万円であり、一〇〇〇万円程度ないしそれを大きく超える原告らの本件株式の売却代金との間には著しい格差がある。

(二) 預託金会員数が株式数に比べて圧倒的に多い。

(三) 本件ゴルフ場でビジターよりも有利な条件でプレーをしたいと望む者が、敢えて株主になることは殆ど皆無に近く、ほとんどの者が預託金会員権の取得によつて会員となる方法を採つている。

(四) 以下の会社設立のいきさつからも明らかなとおり、原告らは、有利な条件でのプレーを目的として出資したのではなく、オーナーとして出資したものである。

(1) 会社設立にあたつて発行した株式は、六〇株であり、株主五九人には、商工会議所の主だつた人達になつて貰つた。

(2) その理由は、右株主を通じて会員希望者を紹介して貰うためであり、現実にもその成果として第一次から第三次までの各募集で会員数は一二五七名に上り、当時札幌近郊のゴルフ場がほとんど赤字であつたことから考えると、会員数を集められたのは、各株主の努力に負うところが大きい。

4 仮に、株主会員優遇措置が令二八条の二に該当するとした場合には、課税対象たる譲渡益は当時の預託金会員権の時価相当額に限られるべきである。

即ち、本件株式を訴外高雄ビル開発株式会社に譲渡するにあたつて、その代金額は、預託金会員権の時価相当額に(株)真駒内の純財産を評価した額を加えるという方法で決められ、具体的には預託金会員権の時価一〇〇万円、会員券発行手数料を一〇万円、残額を訴外会社の純財産として算定されたものであり、課税対象たる譲渡益は預託金会員権の時価相当額約一〇〇万円から諸控除の価格を差し引いたものにすべきである。

六  第一事件原告の主張に対する認否

1 第一事件原告の主張1(一)の事実は否認する。

2 同(二)の事実は否認する。

3 同(三)の事実中、株主会員が何時でも取消、変更がなされ得る不安定なものであるとの点は否認し、株主規定を削除する予定であるとの点は不知。その余の主張は争う。

4 同(四)の事実は不知。

5 同(五)の主張は争う。

6 同2(一)及び同(三)の主張は争う。

7 同(二)の事実は認める。

8 同3の(一)の事実中、原告らの本件株式一株の売却代金が一〇〇〇万円ないしそれを大きく超える金額であることは認め、その余の事実は不知。

9 同(二)の事実は認める。

10 同(三)の事実は否認する。

11 同(四)の冒頭の事実は否認する。

12 同(四)の(1)の事実中、発行株式数が六〇株、株主が五九人であつたことは認め、その余は不知。

13 同(四)の(2)の事実は不知。

14 同4の主張は争う。

(第二事件について)

一  請求原因

1 第二事件原告は、被告札幌西税務署長に対し、昭和五七年三月一五日第二事件原告の昭和五六年分の所得税について総所得金額を二二三八万六一二三円(内訳は別表二の1欄記載のとおり。)、納付すべき税額を六〇五万八九〇〇円とする確定申告をなし、次いで、第二事件原告は、同署長に対し、同年四月三日右確定申告にかかる所得金額の計算に誤りがあつたとして、総所得金額を一六九七万四九七八円(内訳は別表二の2欄記載のとおり。)に更正すべき旨の更正の請求(以下「第二事件更正の請求」という。)を行つた。

2 被告札幌西税務署長は、第二事件更正の請求に対し、同年九月六日付で、第二事件原告の右更正の請求は、その更正すべき理由がない旨の通知処分(以下「第二事件通知処分」という。)を行つた。

3 第二事件原告が第二事件通知処分について、同年一一月四日被告札幌西税務署長に対し、異議申立てをしたところ、同署長は、昭和五八年一月六日付で異議申立てを棄却する旨の決定を行つた。

4 次いで、第二事件原告は同年二月二日国税不服審判所長に対し、審査請求をしたが、同所長は、昭和五九年五月二八日付で審査請求を棄却する旨の裁決をした。

5 しかしながら、第二事件通知処分には、第二事件原告の総所得金額を過大に認定した違法があるから、第二事件原告は、被告札幌西税務署長に対し、第二事件通知処分の取消を求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1ないし4の各事実は認める。

2 同5の主張は争う。

三  被告札幌西税務署長の主張

1 総所得金額とその内訳

第二事件原告の昭和五六年度の各種所得の金額及び総所得金額は、所得税法に基づいて計算すると、別表二の1欄記載のとおりである。

2 譲渡所得の内訳及び算出根拠

第二事件原告は、昭和四二年一二月七日ころ取得した本件株式一株を昭和五六年一月に訴外高雄ビル開発株式会社に売却したが、その譲渡取得は、五四一万一一四五円である。

3 第一事件についての被告札幌南税務署長の主張の3冒頭の事実中、「被告札幌南税務署長」とあるのを「被告札幌西税務署長」と、「第一事件各処分」とあるのを「第二事件通知処分」とそれぞれ訂正するほかは同3、同4のとおり。

四  被告札幌西税務署長の主張に対する認否

1 被告札幌西税務署長の主張1及び2は認める。ただし、譲渡所得については非課税である。

2 同3については、第一事件についての被告札幌南税務署長の主張に対する認否5を「同3(三)の事実中、株主会員は(株)真駒内の株主が所定の手続きを経て入会することになつていたこと及び株主全員が入会するにあたつて入会金及び保証金を納付する必要がなく、本件ゴルフ場施設の利用にあたつても年会費及びロツカー使用量を支払う必要がないなどの点で、一般利用者はもちろん預託金会員に比しても有利な条件で、プレー料金についても一般利用者に比して低廉な料金で利用できるものであつたことは認め、株主全員が本件ゴルフ場施設を有利に利用できる継続的権利を取得できる地位を有していたことは否認し、その余は不知。」と訂正するほかは、同3ないし8のとおり。

五  第二事件原告の主張

第一事件原告の主張1ないし4のとおり。

六  第二事件原告の主張に対する認否

第一事件原告の主張に対する認否1ないし14のとおり。

(第三事件について)

一  請求原因

1 第三事件原告は、被告札幌西税務署長に対し、昭和五七年三月一五日第三事件原告の昭和五六年分の所得税について総所得金額を一〇九〇万七五二五円(内訳は別表三の1欄記載のとおり)、納付すべき税額を一八九万〇七〇〇円とする確定申告をし、次いで、第三事件原告は、被告札幌西税務署長に対し、同年四月三日、右確定申告にかかる所得金額の計算に誤りがあつたとして、総所得金額を三六四万六〇〇〇円(内訳は別表三の2欄記載のとおり。)に更正すべき旨の更正の請求(以下「第三事件更正の請求」という。)を行つた。更に、第三事件原告は、被告札幌西税務署長に対し、同年七月二〇日総所得金額を一一三六万三八五五円(内訳は別表三の3欄記載のとおり。)とする修正申告(以下「第三事件修正申告」という。)を行い、被告札幌西税務署長は、同月三〇日付で過少申告加算税賦課決定処分(内訳は別表三の4欄記載のとおり。)を行つた。

2 被告札幌西税務署長は、同年九月八日付で、第三事件更正の請求に対し、その更正すべき理由がない旨の通知処分(以下「第三事件通知処分」という。)を行つた。

3 第三事件原告が第三事件通知処分について、同年一一月四日被告札幌西税務署長に対し、異議申立てをしたところ、同署長は、昭和五八年一月六日付で異議申立てを棄却する旨の決定をした。

4 次いで、第三事件原告は同年二月二日国税不服審判所長に対し、審査請求をしたが、同所長は、昭和五九年五月二八日付で審査請求を棄却する旨の裁決をした。

5 しかしながら、第三事件通知処分には、第三事件原告の総所得金額を過大に認定した違法があるから、第三事件原告は、被告札幌西税務署長に対し、第三事件通知処分の取消を求める。

二  本案前の主張

請求原因事実を前提として考察するに、適式な修正申告書が提出された場合、その効果として、従前、一応確定したとして取り扱われていた所得金額及び税額は、修正申告書に記載された額に修正され、同時に確定するものであるから、第三事件原告は、第三事件更正の請求をした後に第三事件修正申告を行つたことにより、第三事件更正の請求の理由となつている譲渡所得金額について、当初の確定申告額と同じ七二六万一五二五円であることを自ら認めたものというべきである。したがつて、第三事件修正申告を行つた段階で更正の請求の理由は喪失したと解されるので、第三事件更正の請求に対する更正の理由がない旨の通知処分の取消を求める法律上の利益は失われた。

よつて、第三事件原告の訴えは、不適法なものとして却下されるべきである。

三  本案前の主張に対する認否及び反論

1 被告札幌西税務署長の本案前の主張は争う。

2 錯誤無効

第三事件原告のなした第三事件修正申告には、要素の錯誤があり、右修正申告中、譲渡所得金額七二六万一五二五円とする部分は無効である。

すなわち、第三事件原告は、当初の確定申告において、不動産所得四五万六三三〇円の申告を失念していたところ、被告札幌西税務署長の担当署員がこの点を指摘し、同署員は昭和五七年七月二〇日、自ら修正申告書らに第三事件原告の当初の確定申告に基づいて所得金額等を記入した上で、第三事件原告に署名、押印等を求め、第三事件原告がこれに応じたものである。

第三事件原告は、当初確定申告の譲渡所得金額について、その金額に誤りがあり、右は○とすべしとの更正の請求を既になしていたものであるから、第三事件修正申告書の譲渡所得の欄に七二六万一五二五円との記載があつても、既になした更正の請求の効果が生じており、当該記載について自らこれを認める効果は生じないと理解していた。

したがつて、第三事件修正申告書の譲渡所得金額七二六万一五二五円の記載については、表示された意思と内心の意思との間にくいちがいがあるから当該意思表示には要素の錯誤があり、無効である。

3 信義則違反

第三事件修正申告は、第三事件原告が当初の確定申告に対する更正の請求をした後に、被告札幌西税務署長の担当署員が、右更正の請求のあつたことを知りながら自ら申告書に所得金額等を記載した上で第三事件原告に署名、押印させたものであり、同署員が右修正申告を一方で要請しつつ、これに第三事件原告が従うや、同原告の無思慮に乗じ、これを奇貨として更正の請求の訴えの利益を欠くと主張するのは、信義則に反し許されない。

四  請求原因に対する認否

1 請求原因1ないし4の各事実は認める。

2 同5の主張は争う。

五  被告札幌西税務署長の主張

1 総所得金額とその内訳

第三事件原告の昭和五六年度の各種所得の金額及び総所得金額は、所得税法に基づいて計算すると、別表三の3欄記載のとおりである。

2 譲渡所得の内訳及び算出根拠

第三事件原告は、昭和五三年七月二八日ころ取得した本件株式一株を昭和五六年一月に訴外高雄ビル開発株式会社に売却したが、その譲渡所得は、七二六万一五二五円である。

3 第一事件についての被告札幌南税務署長の主張3の冒頭の事実中、「被告札幌南税務署長」とあるのを「被告札幌西税務署長」と、「第一事件各処分」とあるのを「第三事件通知処分」と訂正するほかは、同3、4のとおり。

六  被告札幌西税務署長の主張に対する認否

1 被告札幌西税務署長の主張1及び2は認める。ただし、譲渡所得については非課税である。

2 同3については、第二事件についての被告札幌西税務署長の主張に対する認否2のとおり。

七  第三事件原告の主張

第一事件原告の主張1ないし4のとおり。

八  第三事件原告の主張に対する認否

第一事件原告の主張に対する認否1ないし14のとおり。

(第四事件について)

一  請求原因

1 第四事件原告は、被告札幌西税務署長に対し、昭和五七年三月一五日第四事件原告の昭和五六年分の所得税について、総所得金額を一一二八万六〇〇〇円(内訳は別表四の1欄記載のとおり。)、納付すべき税額を一八七万〇五〇〇円とする確定申告をなし、次いで、第四事件原告は、被告札幌西税務署長に対し、同年九月七日右確定申告にかかる所得金額の計算に誤りがあつたとして、総所得金額を五四九万一二〇〇円(内訳は別表四の2欄記載のとおり。)に更正すべき旨の更正の請求(以下「第四事件更正の請求」という。)を行つた。

2 被告札幌西税務署長は、同年九月一八日付で、第四事件更正の請求に対し、総所得金額を一一二四万一二〇〇円(内訳は別表四の3欄記載のとおり。)、納付すべき税額を一八五万三九〇〇円とし、第四事件更正の請求のうち、譲渡所得金額に関する請求については、更正すべき理由がない旨の更正処分(以下「第四事件更正処分」という。)を行い、更に、同日付で総所得金額を一八〇九万一二〇〇円(内訳は別表四の4欄記載のとおり。)、納付すべき税額を四九〇万一一〇〇円とする再更正処分(以下「第四事件再更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「第四事件賦課決定処分」といい、これと第四事件更正処分及び同再更正処分とを併せて「第四事件各処分」という。)を行つた。

3 第四事件原告が第四事件各処分について、同年一一月四日被告札幌西税務署長に対し、異議申立てをしたところ、同署長は、昭和五八年一月六日付で異議申立てを棄却する旨の決定をした。

4 次いで、第四事件原告は、同年二月一日、国税不服審判所長に対し、審査請求をしたが、同所長は、昭和五九年五月二八日付で、総所得金額を一八〇一万四三〇〇円(内訳は別表四の5欄記載のとおり。)、納付すべき税額を四八六万二六〇〇円とすべきであるとして、右の限度で第四事件再更正処分を取消し、これに伴い、過少申告加算税を一四万九六〇〇円とすべきであるとして右の限度で第四事件賦課決定処分を取消し、更に、第四事件更正処分のうち、譲渡所得金額について更正をすべき理由がないとする部分、第四事件再更正処分のうち、前記取消額を超える部分については、いずれも審査請求を棄却する旨の裁決をした。

5 しかしながら、第四事件各処分には、第四事件原告の総所得金額を過大に認定した違法があるから、第四事件原告は、被告札幌西税務署長に対し、第四事件各処分の取消を求める。

二  本案前の主張

第四事件原告は、第四事件請求の趣旨1の(一)で、被告札幌西税務署長がなした昭和五六年分の所得税の更正の請求に対する更正処分のうち譲渡所得金額について更正の理由なしとする部分の取消を求め、更に、同1の(二)の中で同署長がなした再更正処分(ただし、昭和五九年五月二八日付裁決で一部取消された後のもの)のうち総所得金額五四九万一二〇〇円を超え一一二四万一二〇〇円までの部分についてもその取消を求めているが、右はいずれも実質的には譲渡所得金額五七五万円を課税所得とする認定の取消を求めるものであり、この点で訴訟の目的を同一にしているにもかかわらず、重複してその取消を求めるものであるから、第四事件請求の趣旨1の(二)の訴え中、前記再更正処分のうち総所得金額五四九万一二〇〇円を超え一一二四万一二〇〇円までの取消を求める部分は、却下されるべきである。

三  本案前の主張に対する第四事件原告の認否及び反論

1 第四事件についての被告札幌西税務署長の本案前の主張のうち、請求の趣旨1(二)中の五七五万円の部分と、同1(一)の請求とは、実質的にはいずれも譲渡所得金五七五万円を課税所得とすることの取消であることは認めるが、その余の主張は争う。

2 第四事件通知処分と第四事件再更正処分とは行政処分としては、別個独立なものであり、たとえ前者の取消がなされたとしても、当然には後者が取消されたことにはならないので、両請求は目的を異にし、二重の請求にはあたらない。

四  請求原因に対する認否

1 請求原因1ないし4の各事実は認める。

2 同5の主張は争う。

五  被告札幌西税務署長の主張

1 総所得金額とその内訳

第四事件原告の昭和五六年度の各種所得の金額及び総所得金額は、所得税法に基づいて計算すると、別表四の5欄記載のとおりである。

2 譲渡所得の内訳及び算出根拠

第四事件原告は、昭和五二年七月二七日ころ取得した本件株式一株を昭和五六年一月に訴外高雄ビル開発株式会社に売却したが、その譲渡所得は、五七五万円である。

3 第一事件についての被告札幌南税務署長の主張3の冒頭の事実中、「被告札幌南税務署長」とあるのを「被告札幌西税務署長」と、「第一事件各処分」とあるのを「第四事件各処分」と訂正するほかは、同3、4のとおり。

六  被告札幌西税務署長の主張に対する認否

1 被告札幌西税務署長の主張1及び2は認める。ただし、譲渡所得については非課税である。

2 同3については、第二事件についての被告札幌西税務署長の主張に対する認否2のとおり。

七  第四事件原告の主張

第一事件原告の主張1ないし4のとおり。

八  第四事件原告の主張に対する認否

第一事件原告の主張に対する認否1ないし14のとおり。

(第五事件について)

一  請求原因

1 第五事件原告は、被告札幌西税務署長に対し、昭和五七年三月九日第五事件原告の昭和五六年分の所得税について、総所得金額を九七一万四六〇〇円(内訳は別表五の1欄記載のとおり)、納付すべき税額を二〇四万六八〇〇円とする確定申告をなし、次いで、第五事件原告は、被告札幌西税務署長に対し、同年四月二七日右確定申告にかかる所得金額の計算に誤りがあつたとして、総所得金額を一六六万四六〇〇円(内訳は別表五の2欄記載のとおり。)に更正すべき旨の更正の請求(以下「第五事件更正の請求」という。)を行つた。

2 第五事件被告は、同年九月六日付で、第五事件更正の請求については、更正すべき理由がない旨の通知処分(以下「第五事件通知処分」という。)を行つた。

3 第五事件原告が第五事件通知処分について、同年一〇月一三日被告札幌西税務署長に対し異議申立てをしたところ、被告札幌西税務署長は、昭和五八年一月六日付で右異議申立てを棄却する旨の決定をした。

4 なお、第五事件被告は、右期間中の昭和五七年一一月一八日付で、第五事件原告に対し、第五事件原告が行つた前記確定申告について、納付すべき税額を二一五万七〇〇〇円とする旨の更正処分(第五事件原告の配偶者が、控除対象配偶者に該当しないことを理由とする処分、内訳は別表五の3欄記載のとおり。以下「第五事件更正処分」という。)及び過少申告加算税賦課決定処分(以下「第五事件賦課決定処分」といい、これと第五事件通知処分及び第五事件更正処分とを併せて「第五事件各処分」という。)をした。

5 次いで、第五事件原告は、昭和五八年一月三一日、第五事件被告がなした前記異議決定に対し、国税不服審判所長に審査請求をしたが、同所長は、昭和五九年五月二八日付で、総所得金額を九六七万六一五〇円(内訳は別表五の4欄記載のとおり。)、納付すべき税額を二一四万二二〇〇円とすべきであるとして、右の限度で第五事件更正処分を取消し、これに伴い、過少申告加算税を四七〇〇円とすべきであるとして右の限度で第五事件賦課決定処分を取消し、更に、第五事件更正処分のうち、譲渡所得金額に関する第五事件更正の請求を更正の理由なしとする部分、第五事件更正処分のうち、前記取消額を超える部分については、いずれも審査請求を棄却する旨の裁決をした。

6 しかしながら、第五事件各処分には、第五事件原告の総所得金額を過大に認定した違法があるから、第五事件原告は、被告札幌西税務署長に対し、第五事件各処分の取消を求める。

二  本案前の主張

第五事件原告は、第五事件請求の趣旨1の(一)で被告札幌西税務署長がなした第五事件更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消を求め、更に同1の(二)で、同署長がなした更正処分(ただし、昭和五九年五月二八日付の裁決で一部取消された後のもの)のうち総所得金額一六六万四六〇〇円を超える部分の取消をも求めているが、右はいずれも実質的には譲渡所得金額八〇五万円を課税所得とする認定の取消を求めるものであり、この点で訴訟の目的を同一にしているにもかかわらず、重複してその取消を求めるものであつて、不適法であるから同1の(二)の訴え中、前記更正処分のうち総所得金額一六六万四六〇〇円を超える部分の取消を求める部分は却下されるべきである。

三  本案前の主張に対する第五事件原告の認否及び反論

1 被告札幌西税務署長の本案前の主張のうち、請求の趣旨1(二)の請求と同1(一)の請求とは、いずれも実質的には譲渡所得金八〇五万円を課税所得とすることの取消であることは認めるが、その余の主張は争う。

2 第五事件通知処分と第五事件更正処分とは行政処分としては、別個独立なものであり、たとえ前者の取消がなされたしても、当然には後者が取消されたことにはならないので、両請求は目的を異にし、二重の請求にはあたらない。

四  請求原因に対する認否

1 請求原因1ないし5の各事実は認める。

2 同6の主張は争う。

五  被告札幌西税務署長の主張

1 総所得金額とその内訳

第五事件原告の昭和五六年度の各種所得の金額及び総所得金額は、所得税法に基づいて計算すると、別表五の4欄記載のとおりである。

2 譲渡所得の内訳及び算出根拠

第五事件原告は、昭和四二年一二月七日ころ取得した本件株式一株を昭和五六年一月に訴外高雄ビル開発株式会社に売却したが、その譲渡所得金額は、八〇五万円である。

3 第一事件についての被告札幌南税務署長の主張3の冒頭の事実中、「被告札幌南税務署長」とあるのを「被告札幌西税務署長」と、「第一事件各処分」とあるのを「第五事件各処分」と訂正するほかは、同3、4のとおり。

六  被告札幌西税務署長の主張に対する認否

1 被告札幌西税務署長の主張1及び2は認める。ただし、譲渡所得については非課税である。

2 同3については、第二事件についての被告札幌西税務署長の主張に対する認否2のとおり。

七  第五事件原告の主張

第一事件原告の主張1ないし4のとおり。

八  第五事件原告の主張に対する認否

第一事件原告の主張に対する認否1ないし14のとおり。

(第六事件について)

一  請求原因

1 第六事件原告は、被告札幌南税務署長に対し、昭和五七年三月一五日第六事件原告の昭和五六年分の所得税について、総所得金額を三三四八万二六五六円(内訳は別表六の1欄記載のとおり。)、納付すべき税額を五二三万五三〇〇円とする確定申告をなした。

2 被告札幌南税務署長は、右確定申告に対し、同年九月一四日付で、第六事件原告の昭和五六年度の総所得金額を四一二三万二六五六円(内訳は別表六の2欄記載のとおり。)、納税すべき金額を九九六万三六〇〇円とする更正処分(以下「第六事件更正処分」という。)及び過少申告加算税賦課決定処分(以下「第六事件賦課決定処分」といい、第六事件更正処分と併せて「第六事件各処分」という。)を行つた。

3 第六事件原告は、第六事件各処分について、同年一一月六日、被告札幌南税務署長に対し、異議申立てをしたところ、同署長は、昭和五八年一月七日付で第六事件原告の異議申立てを棄却する旨の決定をした。

4 次いで、第六事件原告は、同年二月七日国税不服審判所長に対し、審査請求をしたが、同所長は、昭和五九年五月二八日付で、総所得金額を四一一九万四二〇六円(内訳は別表六の3欄記載のとおり。)、納付すべき税額を九九三万九七〇〇円とすべきであるとして、右の限度で第六事件被告の第六事件更正処分を取消し、これに伴い、過少申告加算税を二三万五二〇〇円とすべきであるとして右の限度で第六事件賦課決定処分を取消す旨の裁決をした。

5 しかしながら、第六事件各処分には、第六事件原告の総所得金額を過大に認定した違法があるから、第六事件原告は、第六事件被告に対し、第六事件各処分の取消を求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1ないし4の事実は認める。

2 同5の主張は争う。

三  被告札幌南税務署長の主張

1 総所得金額とその内訳

第六事件原告の昭和五六年度の各種所得の金額及び総所得金額は、所得税法に基づいて計算すると、別表六の3欄記載のとおりである。

2 譲渡所得の内訳及び算出根拠

第六事件原告は、昭和四二年一二月七日ころ取得した本件株式一株を昭和五六年一月二八日訴外高雄ビル開発株式会社に売却したが、その譲渡所得は、右売却代金一七一〇万円から取得費用五〇万円及び譲渡所得の特別控除額五〇万円を差引いた残額について、法二二条二項二号の規定を適用して二分の一を乗じた額に相当する八〇五万円である。

3 第一事件についての被告札幌南税務署長の主張3の冒頭の事実中、「第一事件各処分」とあるのを「第六事件各処分」と訂正するほかは、同3、4のとおり。

四  被告札幌南税務署長の主張に対する認否

1 被告札幌南税務署長の主張1及び2は認める。ただし、譲渡所得については非課税である。

2 同3については、第二事件についての被告札幌西税務署長の主張に対する認否2のとおり。

五  第六事件原告の主張

第一事件原告の主張1ないし4のとおり。

六  第六事件原告の主張に対する認否

第一事件原告の主張に対する認否1ないし14のとおり。

第三<証拠略>

理由

一  第三事件の本案前の申立てについて

1  第三事件原告が、昭和五六年分の所得税について、被告札幌西税務署長に対し、昭和五七年三月一五日別表三の1欄記載のとおりの確定申告を行い、更に、同年四月三日右確定申告にかかる所得金額に誤りがあり納付すべき税額が過大であつたとして、別表三の2欄に記載のとおりの更正の請求をしたこと、その後、第三事件原告が被告札幌西税務署長に対し、同年七月二〇日別表三の3欄記載のとおりの修正申告を行つたこと、更に、同年九月八日付で被告札幌西税務署長が右更正の請求に対し更正すべき理由がない旨の通知処分を行つたことは、当事者間に争いがない。

2  <証拠略>によれば、第三事件原告が第三事件修正申告を行つた経緯として、次のような事実が認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。

第三事件原告は、昭和五六年分の所得税の確定申告にあたり、本件株式の譲渡所得は非課税であると考えていたが、委任した管野税理士の方針に従い確定申告においては右譲渡所得七二六万一五二五円を課税所得として申告し、その後右譲渡所得を○とする旨の更正の請求をするという方法をとることとし、前記のとおりの確定申告及び更正の請求を同税理士に委任して行つた。第三事件原告は、昭和五七年七月ころ被告札幌西税務署長の担当署員から昭和五六年分の確定申告に不動産関係の申告漏れがあるので出頭するように告げられ、管野税理士に相談することなく、自ら同年七月二〇日同署に出頭したところ、同署所属明全事務官が第三事件原告に対し、不動産所得についてだけ修正したいので、右不動産所得の申告漏れについて修正申告されたい旨を告げ、第三事件原告がこれを了承し、同事務官から右申告用添付書類として渡された「貸家貸宅地の収支計算書」に、貸地の昭和五六年分地代収入六六万円から必要経費(固定資産税)を控除した残額四五万六三三〇円を不動産所得金額として自ら記載し、これを右申告漏れに係る不動産所得金額として申出たことから、同事務官が第三事件原告の面前で修正申告書用紙の「<A>修正前の課税額」欄に第三事件原告の当初の所得の種類ごとの確定申告額を、「<B>修正申告額」欄に右と同額の確定申告額及び前記申告漏れの不動産所得額を「<C>修正する額(<B>-<A>)」欄に総所得金額の差額をそれぞれ記載し、第三事件原告が同申告書に住所、氏名、生年月日、職業、電話番号、世帯主の氏名及び世帯主との続柄をそれぞれ記載し、押印欄に押印し、これを同事務官に提出して修正申告をした。

3  ところで、申告納税方式をとる所得税にあつては、納付すべき税額は、納税者の申告があれば、特に税務署長において更正する場合を除き、その申告によつて確定し、納税者は申告にかかる税額を納付すべき義務を負担するものである。そして、この理は、先になされた申告税額を増額してなされる修正申告にもそのまま妥当し、修正申告がなされた場合、納付すべき税額は、修正申告によつて増額された部分を含む申告額全額が即時に確定するものというべきである。したがつて、第三事件原告の昭和五六年分の所得税は、第三事件更正の請求後になされた第三事件修正申告の時点でその税額が即時に確定したものということができるところ、右修正申告においては、譲渡所得金額は当初の確定申告額である七二六万一五二五円と同額であるとしているから、後記判示の錯誤の要件を満たす等の特段の事情がない限り、右修正申告以前になされた更正の請求はその請求の基礎を失うことになるので、第三事件原告が、右更正の請求に基づきなされた更正の請求が理由がない旨の通知処分の取消を求める利益は失われたものと解される。

4  そこで、右修正申告が、錯誤により無効であるとの第三事件原告の主張の当否について判断する。

所得税の修正申告書の記載内容についての錯誤の主張は、その錯誤が客観的に明白かつ重大であつて、所得税法の定めた方法以外にその是正を許さないならば、納税義務者の利益を著しく害すると認められる特段の事情がある場合でなければ、許されないものと解すべきであるところ(最高裁昭和三六年(オ)第四九九号同三九年一〇月二二日第一小法廷判決・民集一八巻八号一七六二頁参照)、前示2掲記の各証拠によれば、本件修正申告にあたり、第三事件原告及び明全事務官は、第三事件原告の昭和五六年分の所得税の確定手続の進行状況のうち不動産所得に関する部分だけ変更を加える意思を有し、その他のものについては、譲渡所得を含め当時の租税確定手続の進行状況に影響を及ぼす意思を有していなかつたうえ、第三事件原告は右修正申告にあたり税理士に事前に相談をしていなかつたため修正申告が既になされた更正の請求にいかなる影響を及ぼすか理解していなかつたことが認められる。

5  以上の認定事実によれば、第三事件原告は、内心では昭和五六年分の譲渡所得金額は○であると思つていたにもかかわらず、第三事件修正申告の際、誤つて譲渡所得金額を七二六万一五二五円と申告したものであるから、修正申告書に表示された意思と第三事件原告の内心の意思との間には齟齬があるので、第三事件原告の意思表示には錯誤があるということができる。

そして、第三事件修正申告は被告札幌西税務署長側からの第三事件原告に対する勧奨をきつかけとしてなされたものであること、第三事件修正申告書の総合譲渡所得欄等の金額の記載はいずれも同署所属事務官が自ら記載したものであること、同事務官はその際第三事件原告に対し不動産所得の申告漏れに限つて修正する旨の説明をしており、また同事務官も第三事件原告も昭和五六年分の所得税のうち不動産所得に関するもの以外に影響を及ぼす意思を有していなかつたこと、第三事件原告が第三事件修正申告をする際に右修正申告と抵触する第三事件更正の請求が既になされていたことは、修正申告書の記載内容自体からは明らかではないものの、第三事件更正の請求及び同修正申告はいずれも被告札幌西税務署長宛てになされているので、同被告側にとつては明白であつたといえること、被告札幌西税務署長は第三事件更正の請求に対して右修正申告後の昭和五七年九月八日右更正の請求が有効に存在することを前提とした第三事件通知処分を第三事件原告宛てに行つていること等の事情を総合すると、第三事件原告の第三事件修正申告における錯誤は、客観的に明白かつ重大であつて、所得税法の定めた方法以外にその是正を許さないならば納税義務者の利益を著しく害すると認めるに足る特段の事情のある場合に該当すると解するのが相当である。

したがつて、その余の点について判断するまでもなく、第三事件原告は、本訴において、第三事件修正申告のうち譲渡所得の修正申告部分についてその無効を主張して、第三事件通知処分の取消を求めることができるというべきであり、この点に関する被告札幌西税務署長の本案前の主張は理由がない。

二  第四事件の本案前の申立てについて

1  第四事件原告が、昭和五六年分の所得税について、被告札幌西税務署長に対し、昭和五七年三月一五日別表四の1欄記載のとおりの確定申告を行い、更に、同年九月七日右確定申告にかかる所得金額の計算に誤りがあつたとして別表四の2欄記載のとおり給与所得金額及び譲渡所得金額の減額を求める第四事件更正の請求を行つたところ、被告札幌西税務署長が、同年九月一八日付で別表四の3欄記載のとおり給与所得金額、総所得金額及び納付すべき税額を減額するとともに譲渡所得金額に関する更正の請求については更正すべき理由がない旨の第四事件更正処分を行い、更に同日付で別表四の4欄記載のとおり、譲渡所得金額を増額させる第四事件再更正処分及び第四事件賦課決定処分を行つたことは、いずれも当事者間に争いがない。

2  被告札幌西税務署長がした第四事件再更正処分は、従前の処分の効力が再更正処分後も存続することを前提とする追加された増額部分についてのみの処分ではなく、あらためて昭和五六年分の所得全体について所得金額、税額等を確定しなおしたものと解されるので、先になされた第四事件更正処分は、後になされた第四事件再更正処分に吸収されてその外形が消滅したものと解するのが相当である。

したがつて、第四事件更正の請求に対する第四事件更正処分中の譲渡所得金額について更正の理由なしとする部分の取消を求める訴えの利益は失われたものとして、これを却下すべきである。

三  第五事件の本案前の申立てについて

1  第五事件原告が、昭和五六年分の所得税について、被告札幌西税務署長に対し、昭和五七年三月九日別表五の1欄記載のとおりの確定申告を行い、更に、同年四月二七日右確定申告にかかる所得金額の計算に誤りがあつたとして別表五の2欄記載のとおり、譲渡所得金額を○にすべしとの第五事件更正の請求を行つたところ、被告札幌西税務署長が、同年九月六日付で右更正の請求については更正すべき理由がない旨の第五事件通知処分を行つたこと、更に、被告札幌西税務署長は、昭和五七年一一月一八日付で第五事件原告の確定申告について、第五事件原告の配偶者が控除対象配偶者に該当しないことを理由として納付すべき税額を増額させる等の内容の別表五の3欄記載のとおりの第五事件更正処分及び第五事件賦課決定処分を行つたことは、いずれも当事者間に争いがない。

2  被告札幌西税務署長がなした第五事件更正処分は、従前の申告等の効力が更正処分後も存続することを前提とする追加された増額部分についてのみの処分ではなく、あらためて昭和五六年分の所得全体について所得金額、税額等を確定しなおしたものと解され、また更正の請求を理由なしとする通知処分とその後なされた増額更正処分との関係についても、更正処分と増額再更正処分の関係と同様に解するのが相当である。そうすると、先になされた第五事件通知処分は、後になされた第五事件更正処分に吸収されてその外形が消滅したものと解するのが相当である。

したがつて、第五事件更正の請求に対する更正の理由がない旨の第五事件通知処分の取消を求める訴えの利益は失われたものとして、これを却下すべきである。

四  本案についての判断

1  第一ないし第六事件の課税処分の各経過について検討するに、第一ないし第四事件の各請求原因1ないし4、第五事件請求原因1ないし5、第六事件請求原因1ないし4の各事実は、いずれも当事者間に争いがない。

2  また、被告らの各主張にかかる原告らの昭和五六年分各種所得金額については、いずれも当事者間に争いがなく、原告らは、譲渡所得を除くその他の各種所得に対する課税の適法性について争わないから、被告らの各処分のうち、原告らの譲渡所得を除くその他の各種所得に関する部分については適法と判断すべきものである。

3  そこで、原告らの譲渡所得について検討する。

(一)(1)  第一及び第六事件の各被告札幌南税務署長の主張2、第二ないし第五事件の各被告札幌西税務署長の主張2の各事実は、いずれも当事者間に争いがない。

(2) 第一及び第六事件の被告札幌南税務署長の主張並びに第二ないし第五事件の被告札幌西税務署長の主張の各3の(一)、(二)の事実及び同(三)の事実中、株主会員は(株)真駒内の株主が所定の手続きを経て入会することになつていたことは、いずれも当事者間に争いがなく、<証拠略>によれば、株主会員は、入会にあたつて入会金及び保証金を納付する必要がなく、また、本件ゴルフ場施設の利用にあたつて年会費及びロツカー使用料を支払う必要がないなどの点で一般利用者はもちろん預託金会員に比しても有利な条件で、またプレー料金についても一般利用者に比して低廉な料金で利用できるものであつたことが認められる(この認定事実は第二ないし第六事件の各当事者間では争いがない。)。もつとも、<証拠略>中には、「年間一〇枚あて交付されるゴルフ招待券を持参したときのみ、ビジターより低廉なプレー料金でプレーできたに過ぎず、ロツカー使用料等も支払つていた。」旨の供述部分があるけれども、同人は、「細かい手続きは全て秘書に任せていてわからない。」とも述べていることや右供述部分は<証拠略>とも矛盾することに照らし、これを採用することはできない。

(3) <証拠略>によれば、本件ゴルフクラブの規約には「本クラブの会員は次のとおりとする。(中略)五、株主会員(後略)」、「株主会員は会社の株主で会社に所定の手続を経て入会したものを云う。」との定めがあること、(株)真駒内は本件ゴルフ場がオープンした昭和四四年六月一五日を含む営業年度である第二期営業年度(昭和四三年一二月一日から昭和四四年一一月三〇日まで)に株主全員に対し同社名義の「真駒内カントリークラブ会員証(株主)」と題する株主会員証を該当株主の株主台帳の割印欄に割印のうえ発行しこれを全株主に交付して全株主を株主会員として処遇し、全株主もこれに何に異議を述べることなく右会員証を受領したこと、右会員証は預託金会員の会員証と同一の体裁のものであること、本件ゴルフクラブの細則には、株主会員の年会費及びロツカー使用料を無料とする旨の定めがあり、これを有料とされる預託金会員と比べて有利な取り扱いであること、株主会員のプレー料金は預託金会員と同額と定められ、この額は一般利用者のプレー料金より低額であつたこと、(株)真駒内と本件ゴルフクラブが発行した本件ゴルフクラブの会員名簿には会員名が株主会員、預託金会員の区別なくアルフアベツト順に掲載され、各会員氏名の冒頭に株主会員には「株」、預託金会員のうち個人会員には「個」、法人会員には「法」という表示が記載されていること、現実に原告らを含む各株主は昭和四四年に本件ゴルフ場がオープンして以来昭和五六年に訴外高雄ビル開発株式会社に本件株式を譲渡するまでの一〇年余の間以上のような一般利用者よりも有利な条件で本件ゴルフ場を利用することができたこと、本件ゴルフクラブは独自の財産や意思決定機関を持たず、事務所を(株)真駒内に置き、(株)真駒内が本件ゴルフクラブの規約の変更改廃、会員資格の得喪、役員の選任等の重要事項についての決定権限を持ちかつ会計業務を行つていたことが認められ、右認定に反する第五事件原告本人の供述は<証拠略>に照らしにわかに信用できず、<証拠略>も右認定を覆すに足らず、他に認定を左右するに足りる証拠はない。

(二)  右(一)認定の事実を総合すると、(株)真駒内はゴルフ場の経営を主たる目的とする株式会社であること、本件ゴルフクラブは独立の団体としての実質を持たず、実質的に(株)真駒内と一体の存在であり、(株)真駒内に従属しその支配を受けるものであること、本件ゴルフクラブには株主会員という種類の会員が存在すること、(株)真駒内の株主は、株主になることにより、本件ゴルフクラブ及びこれと実質的に一体の関係にある(株)真駒内に対し、自らを本件ゴルフクラブの株主会員として取り扱うことを請求することができる地位を取得するものであること、本件ゴルフクラブの株主会員は、一般の利用者に比して有利な条件で継続的に本件ゴルフ場を利用する権利を有すること等を認めることができる。したがつて、株主は、同社の株主として株主名簿(台帳)に名義登録されることにより、当然に本件クラブの株主会員として同クラブの会員名簿に登載されるものであるから、(株)真駒内の株式は、同社の株主たる地位のほかに、本件ゴルフ場を一般の利用者に比して有利な条件で継続的に利用する権利を伴つた有価証券ということができる。

そうすると、本件株式の譲渡所得は、法九条一項一一号ニ及び令二八条の二に該当し、課税の対象になるものというべきである。

(三)  法的権利性、継続性の有無について

原告らは、右のような株主の本件ゴルフ場施設の利用に関する優遇措置は各株主が(株)真駒内が無配状態であるのに本件ゴルフ場の会員募集に尽力したことに対する功労的あるいは恩恵的措置に過ぎず、継続的権利ではない等と主張するので、この点について検討する。

<証拠略>によれば、本件株式は設立以来配当がされていないこと、(株)真駒内は設立当時株式六〇株を発行し株主を通じて預託金会員を多数集めるため、主として札幌地区の名士と称される人々を中心に株式を引き受けてもらつたこと、各株主の努力により本件ゴルフクラブの預託金会員の数が順調に増え(株)真駒内の経営の安定に貢献したこと、(株)真駒内側では、本件ゴルフ場の運営について、(株)真駒内の利益を反映させるために株主を本件ゴルフクラブの会員としたうえで本件ゴルフクラブの役員として就任させる意図のあつたこと、(株)真駒内の定款中には、株式にゴルフ会員権が付着していることについての規定がないこと、(株)真駒内の株主であつた者六〇名中の五七名から本件株式を取得した訴外高雄ビル開発株式会社は、本件ゴルフクラブの会員となつていないこと等の事実が認められるが、前記(一)の事実を併せて考慮すれば、株主の本件ゴルフ場施設の利用に関する優遇措置は、単なる恩恵的措置に止まらず、継続的権利の実質を備えたものというを妨げないものというべきである。

なお、前掲第五事件原告本人は、「本件ゴルフクラブ規約中の会員の種類として記載されている株主会員は、将来営業資金が不足したときに募集するための規定であつて、規約上の株主会員は存在せず、(株)真駒内の利益を守るために真駒内カントリークラブに送り込んだ株主に便宜上株主会員という名称を使用したに過ぎない。本件ゴルフクラブ規約には会員の除名規定があるので除名の対象となり得ない株主を会員とすることはできない。」旨供述する。しかしながら、前記認定した事実、<証拠略>によると、(株)真駒内が、営業報告書においても全株主を「株主会員」と扱つていること、小部幸一は、株主会員としてゴルフ場の利用ができることを当然の前提として株式を引受けたものであり右引受の際にもその後にも、(株)真駒内側から会社の利益確保のために真駒内カントリークラブに株主を送り込む便宜上、株主会員という名称を付したに過ぎない旨の説明を受けたことがないことが認められるうえ、ゴルフクラブの会員資格の剥奪である除名と株主の地位の喪失とは同一でなく、この点に関する右第五事件原告の供述部分はその前提を欠くと考えられることなどに照らし、前記供述は採用することができない。

以上によれば、この点に関する原告らの右主張は理由がない。

(四)  併用制形態について

(1) 原告らは、預託金会員と株主会員の併用制をとるゴルフ場は、令二八条の二の規定に該当せず、非課税である旨主張するので、この点について判断する。

本件ゴルフクラブに預託金会員が存在することは、当事者間に争いがなく、前示のとおり本件ゴルフクラブには株主会員が存在することは明らかであるから、本件ゴルフクラブは、預託金会員と株主会員の併用制を採用しているということができる。

(2) そこで検討するに、令二八条の二の「ゴルフ場の所有又は経営に係る法人の株式又は出資を所有することがそのゴルフ場を一般の利用者に比して有利な条件で継続的に利用する権利を有する者となるための要件とされている場合における当該株式又は出資」との規定については、文理上当該ゴルフクラブにいわゆる株主会員以外の会員が他に存するか否かを問わず、株式を所有することによりそのゴルフ場を一般の利用者に比して有利な条件で継続的に利用する権利を取得できる地位にある場合の当該株式のことを指すと解すべきであつて、これをあえて原告らの主張のように限定解釈すべき合理的理由は認められないから、原告らの右主張は失当である。

(3) なお、付言するに、右規定は、法九条一項一一号ニを受けたものであり、右各条項の立法趣旨は、ゴルフ会員権の成立形態には株主会員権、預託金会員権、複合形態の会員権の三種類が認められるところ、昭和四八年の法改正前には、右のうち、預託金会員権の譲渡益については課税対象とされていたのに比し、株主会員権及び複合形態の会員権の各譲渡益については有価証券の譲渡として非課税であつたため、両者の間に経済的実態としては差異がないにもかかわらず、課税について不均衡を生じていたものを是正しようとしたものであることは当事者間に争いがない。

右立法趣旨からすると、株主会員権が預託金会員権と同様のゴルフ会員権としての経済的実態を備えていることが課税の実質的根拠と考えられるのであつて、当該ゴルフ場が株主会員のみによつて構成させているか、預託金会員との併用制を採つているかによつて株主会員権の譲渡益に対する課税の有無が分かれるとすることは、右立法趣旨に沿わない独自の見解と言わざるを得ないから、右結論は立法趣旨にも適うものである。

(五)  適用除外の特別事情

(1) 原告らは、第一事件原告の主張3記載の各種の事情のある本件においては、立法趣旨からみて本件株式の譲渡益に令二八条の二を適用すべきではなく非課税とすべきであると主張する。

しかし、仮に前記事情が存在したとしても、文理上令二八条の二について原告ら主張のような解釈をとる余地はないし、本件においてあえて原告らの主張を採用すべき特段の事情も後記のとおり存在しないから、原告らの右主張は理由がない。

(2) 原告らの本件株式一株の売却代金が一〇〇〇万円程度ないしそれを大きく越える金額であること、(株)真駒内設立にあたつて発行した株式六〇株を株主五九人が引き受けたこと、本件ゴルフクラブについて右株主数に比して預託金会員数は圧倒的に多数であつたことは、当事者間に争いがない。そして、法九条一項一一号ニ、令二八条の二で株式形態のゴルフ会員権に課税する趣旨が預託金会員権との課税上の不均衡を是正することにあつたことは前説示のとおりであり、また、(株)真駒内設立にあたつて発行した株式は株主を通じて預託金会員を多数集めるため主として札幌市内のいわゆる名士に引き受けてもらい実際にも各株主の努力により預託金会員募集は順調に行われたことは前記認定のとおりである。

更に、<証拠略>によれば、本件ゴルフ場の預託金会員権価格の相場は原告らの本件株式売却当時約百数十万円であつて、各原告らの本件株式売却価額との間におよそ一〇倍以上の格差のあつたこと、原告らの本件株式の売却価格がこのような高額になつたのは、当時原告らが本件株式を売却した訴外高雄ビル開発株式会社が本件ゴルフ場の経営権を獲得する目的で本件株式六〇株の大部分を買い占めようとしていたためであることが認められる。

そうすると、本件株式を保管することの実質は、単に本件ゴルフクラブの会員権を有することだけにとどまらず、(株)真駒内の経営に実質的に参加するという要素も含まれていることは否定しえず、またその譲渡価格が預託金会員権価格の約一〇倍ないしそれ以上という高額になつた理由は、買主が会社の資産及び経営権の取得に高い価値を見出したことにあるとも推認しうるから、本件株式の譲渡益が課税対象とされることについて原告らが不満を抱くことも素朴な感情としては一応理解できる。

(3) しかしながら、課税の基本原則である公平性、普遍性の要請に鑑み、当該租税法規の拡張解釈、縮少解釈を濫りに行うことは許されるべきでないから、右の程度の事情があるからといつて本件株式の譲渡益につき令二八条の二を適用しないという理由にはならないものというべきである。また、そもそも法九条一項一一号において有価証券の譲渡による所得を原則として非課税所得としている趣旨は、資本市場の育成の必要という政策的配慮及び所得捕捉の困難性からくる課税上の不公平を回避するという課税技術的配慮の二点であると解され、これは担税力に応じた課税をするための措置ではなく、経済政策上の目的を有するいわゆる租税特別措置であるにすぎないことは明らかであるから、令二八条の二のような有価証券譲渡益非課税に対する例外規定についてその文理に反してまで限定的に適用しようとすることは、通常の場合よりもさらに一段と強い特段の事情がない限り許されないものというべきである。

(六)  課税額は、預託金会員権時価相当額に限られるとの原告らの主張について

法九条一項一一号ニ及び令二八条の二の法意は、課税対象となる当該株式の譲渡所得全部について課税する趣旨であると解され、文理上も原告ら主張のように解釈する余地はないものというべきであるから、原告らの主張は理由がない。

なお、右(五)で認定した諸事情を実質的に配慮しても、前記(五)(3)説示と同様の理由から、原告ら主張のように課税額を限定するのは相当でない。また、一般に株式の譲渡価額は様々な要因が総合されて形式されるものであつて個々の要因ごとの対価を集積したものではないため株主会員権の譲渡対価をゴルフ場利用権相当部分と株式相当部分に分割すること自体に無理があると考えられることからも原告らの主張は相当でない。したがつて原告らのこの点に関する右主張も採用することができない。

五  以上の次第で、第四事件原告の訴え中、被告札幌西税務署長が昭和五七年九月一八日付でした昭和五六年分の所得税の更正の請求に対する更正処分のうち、譲渡所得金額について更正の理由なしとする部分及び第五事件原告の訴え中、被告札幌西税務署長が昭和五七年九月六日付でした昭和五六年分の所得税の更正の請求に対する更正すべき理由がない旨の通知処分の各取消を求める部分をいずれも却下することとし、原告らのその余の各請求は理由がないからいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担については行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条、第九三条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 塩谷雄 野山宏 近藤宏子)

別表一 <略>

別表二 <略>

別表三 <略>

別表四 <略>

別表五 <略>

別表六 <略>

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